2007年度NIE実践報告書
登別大谷高等学校 星 秀一
高等学校 教科「情報」での「NIE」
高等学校における普通教科「情報」の目標は「情報活用の実践力」をつけ、「情報の科学的な理解」をさせ、「情報社会に参画する態度」を養うこととなっている。中でも「情報A」では、情報や情報技術を活用する際の実践的な活動を通して、情報と個人や社会生活とのかかわりを関連付けて指導し、情報や情報技術の特性や仕組みを理解した上で、それらを活用し自ら課題を見つけてそれを解決していける能力を育成することを目標としている。
このような目標から問題を自ら発見しそれを解決していく工夫をする際に、「今、何が問題か?」を発見させ、そのことを自分自身の中に意識させることが重要となってくる。それには目標と現状を把握し、目標を達成するために障害となっている事項を整理し具体的に書き表す必要がある。そしてこの問題と現状を把握する上で「情報の収集」がきわめて重要な役割を担う。
そこで本校1年生80名(男子42名、女子38名)を対象にどのようなメディアからどの分野の情報をどの程度収集しているのかアンケート調査を行った。結果は次の通りである。
情報アンケート 結果
1. あなたが情報(ニュース)を得る手段は主にどのようなメディアからですか。
(1)テレビ (2)新聞 (3) 雑誌 (4)インターネット
(5)携帯サイト (6)他の人 ≪友達・家族・先生など≫
(1) 75% |
(2) 2% |
(3) 3% |
(4) 5% |
(5) 14% |
(6) 2% |
2. あなたの家(寮など)では新聞を見ることが出来ますか。
(1)出来る (2)出来ない
(1) 91% |
(2) 9% |
3. あなたは1週間のうちどのくらいの割合で新聞をみますか。(テレビ欄、スポーツ欄など一部でも)
(1)毎日 (2)週1〜2回 (3)週3〜4回
(4)週5〜6回 (5)見ない
(1) 25% |
(2) 34% |
(3) 13% |
(4) 7% |
(5) 21% |
4. あなたが新聞で読むのは主にどの欄ですか。(複数回答)
(1)1面≪一番表≫ (2)政治・経済・社会欄 (3)生活欄
(4)スポーツ欄 (5)テレビ欄 (6)文化・芸能欄
(7)地域欄 (8)コラム欄 (9)社説 (10)広告欄
(11)求人欄 (12)海外(国際)の欄
(1) 12% |
(2) 2% |
(3) 2% |
(4) 22% |
(5) 39% |
(6) 14% |
|
(7) 6% |
(8) 2% |
(9) 0% |
(10) 0% |
(11) 0% |
(12) 0% |
0% |
5. あなたが新聞を見るとき主に見る(読む)のはどの部分ですか。(複数回答)
(1)主見出し (2)袖(そで)見出し (3)リード見出し
(4)写真 (5)興味のあるものはほぼ全部
(1) 36% |
(2) 14% |
(3) 2% |
(4) 23% |
(5) 25% |
6. 新聞全体を見ない(読まない)人、その理由は何ですか。
(1)新聞が無い (2)時間が無い (3)全体的に記事の内容がわかりにくい
(4)大きくて扱いづらい (5)漢字が多くて読みにくい
(6)読むのが苦手 (7)他のメディア(TVなど)から情報を得るから
(8)その他「回答(面倒くさい、興味がない) 」
(1) 8% |
(2) 19% |
(3) 15% |
(4) 0% |
(5) 8% |
(6) 13% |
(7) 32% |
(8) 6% |
7. あなたはどのような新聞なら読む気になりますか。(例 字が大きい。写真が多い)
*スポーツ新聞 *写真が多い *わかりやすい内容 *字が大きく見やすい *芸能情報 *カラーが多い(カラフル) *知ってる人が載っている *面白い *やさしい言葉で *4コマだけ *字が多くない *そのニュースの細かいデータ *番組の情報を増やす |
8. あなたはTVでニュースを見ますか。
(1)意識して見る (2)ニュースが映っていると見る(聞く)
(3)特に見ない
(1) 14% |
(2) 84% |
(3) 2% |
9. あなたは1日平均どのくらいの時間、TVを見ていますか。
(1)30分以内 (2)1時間程度 (3)2時間程度 (4)3時間以上
(5)見ない (6)見る環境が無い
(1) 13% |
(2) 11% |
(3) 22% |
(4) 50% |
(5) 3% |
(6) 2% |
10. インターネットまたは携帯でニュースの項目をみますか。
(1)毎日のように見る (2)時々見る (3)見ない
(4)見る環境が無い
(1) 18% |
(2) 49% |
(3) 29% |
(4) 4% |
11. 今一番興味・関心のあるニュースは何ですか。
*温暖化現象 *いじめ問題 *天気情報 *学生の自殺 *安倍総理(次の総理) *殺人 *スポーツ *虐待 *16歳少女父親殺し *母子殺害 *国会 *相撲関連の事件 *芸能 *特になし(23) |
12. あなたに今一番必要な情報は何ですか。(例 明日の天気情報。経済情報。イベント情報。ラーメンのおいしい店情報)(2つ,3つ書いても良い)
*今日・明日・週間の天気(38) *スポーツ *経済 *政治 *イベント *高校野球 *芸能 *流行 *まともなニュース *地域 *サッカー *音楽 *映画 *学校 *特になし(11) |
アンケート結果からTVからの情報収集が圧倒的に多く、新聞を見る機会は十分にあるが「週1回〜2回」または「見ていない」が全体の半数以上を占めた。見ていると答えた生徒の中でも見ているのは「テレビ」欄と「スポーツ」欄が60%以上、その他の欄が数%または全く見られていないのが現状であることを改めて認識させられた。しかし本校生男子生徒の約30%は学校寮で生活しており、多種多様な情報を得るには十分な環境とは言えないのが一因かもしれない。さらに目を引くのは「今一番興味・関心のあるニュース」で「特になし」の生徒が22名もいることに、また「今一番必要な情報は」で「特になし」が11名もいたことに驚かされる。
時期世代を担う生徒は、今生活しているこの社会のことを、そして世界のことをもっと知るべきである。社会で毎日起こっていること、自分の知らない世界のことを知ること即ち様々な情報の収集をすることにより自分がこの社会の中でどのように生活し、どんな工夫をし、今そして将来どう生きていくかを見つけ出すことができるであろう。人は様々な問題を抱えて生きているはずで、何の問題も持ち合わせることのない人はいないであろう。そんな問題を1つずつ解決していくために、新聞はとても身近ですぐ手の届くところに存在するきわめて有効なメディアであると思う。
そのような理由で教科「情報」を通してそれを実践して行くことができればと思い「新聞」を利用(活用)することにした。
実際の授業との関わりとして、単元では「情報の効果的な活用」分野の「情報の検索と収集」の部分と「情報の活用とコンピュータ」の分野において、新聞を活用し問題の発見と情報の収集を行い、それをコンピュータを使って整理・編集を行う。さらに「情報の収集・発信の問題点」で情報の信憑性と信頼性、プライバシーなどについて新聞と他のメディアと比較することで行うこととした。
まず第1の目標はとにかく今社会で起こっていること、話題になっていることを知らせること。そのため週1回2コマ続きの授業のはじめに一人1部ずつ新聞を渡し、30〜40分かけて新聞を読むことに集中させた。その後各分野(政治、経済、国際、社会、生活、地域など)で目を引いた記事、興味のある記事1つを抽出しコンピュータにてその主見出し、袖見出し、リードなどを入力・整理させた。また、特に注目の記事についてその内容をまとめさせ、記事に関しての自分なりの考え、感想を書かせた。
1年B組 氏名 2007年9月29日付 北海道新聞 @総合面 不支給処分は合憲 原告敗訴確定 最高裁が初判断 A政治 収入総額2691億円 バブル後最低水準 企業献金は19%減 B国際 大使召還も検討 邦人銃撃死で政府 真相解明を要求 C経済 赤平など道内4市赤字 総務省速報値 税収格差が拡大 D生活 音更のニンジン 形よく甘さじわり Eスポーツ ドラ遠のくV 好投中田、一球に泣く F地方 興味津々巡視艇の中 喜門岱小児童 海保の仕事学ぶ G社会 時効成立の男を提訴 貴族が賠償請求 「犯人認定を」 H特に注目の記事 蘭越女性殺害から2週間 容疑者特定至らず 凶器など捜索続く (1)内容: 【蘭越、寿都】後志管内蘭越町の土捨て場で、札幌市豊平区の無職上野雪絵さん(三七)が殺害され、長女(七つ)も重傷を負って見つかった事件から二十九日で二週間。倶知安署の捜査本部は、上野さんが交友関係のトラブルにより殺害されたとみて、同管内寿都町の男性を任意で数回、事情聴取したが、容疑者の特定には至っていない。捜査本部は、凶器や遺留品の捜索を続ける一方、上野さんの携帯電話の履歴や目撃情報をもとに、事件前後の足取りを調べている。 (2)記事に関して考えること: どうして殺人事件が起こるんだろう。交友関係で殺人なんて普通の日常から考えるとまず起こらないと思う。自分達の過ごしている環境では交友関係のトラブルなんてすぐに終わる。それがどうして殺人事件につながるんだろうか。どんな理由であれ、殺人なんて絶対にしてはいけない事なのに。殺人事件がなくなる事はないのだろうか。もしこれが無くなれば、悲しむ人も、苦しむ人も出ないだろうに…。ぼくはいつもこう思っています。 |
1年C組 氏名 2007年10月2日付 朝日新聞 @総合面 入り乱れる2作戦 対テロ戦争の現状と日本 A政治 新法骨子案固まる 給油、給水に限界/国会承認削除 B国際 国境の町へ不安の波 タイ側との貿易減少 ヤンゴンから脱出者 C経済 景気下ぶれ懸念も 年内利上げ少数 D生活 プロを味方に緊張感を リフォーム業者に甘い仕事をさせないためには? Eスポーツ 「行き過ぎだと思う」 「師匠に一番の責任」 北の湖理事長会見 F地方 老人ホーム運営者募集 敷地の貸与備品は無償 施設建て替え条件 G社会 不安・心配の幕開け 業務・人員引き継ぐ ATMも従来通り H特に注目の記事 「お金だよ」売人は11歳 麻薬栽培 懐潤す警察官、遠い撲滅 |
(1)
内容: 外壁を白く塗った小さなモスク(イスラム礼拝所)の庭で、少年(11歳)がたこをあげていた。「学校がつまらなくて、毎日ここであそぶんだ。」顔はまだ幼い。上着のポケットが不自然に膨れている。「お金だよ」と意味ありげに笑った。実は麻薬密売人であることは、常連客だけの秘密である。 (2)記事に関して考えること: なんで11歳の少年が麻薬の密売なんてやってるんだろう。この国では、お金儲けのために、一般人だけでなく警察官もケシ栽培をしているらしい。子供に危ない商売をさせたり、それをやめさせるべきの警察官が一緒になってやっているという。信じられない。麻薬や、違法なものはなくならないと思うけど、せめて常識は考えてほしい。子供が危ない商売をしないように、警察はきちんと正義を貫く。こういう当たり前のことができるまでは、どこも安全とはいえないんだと思う。 |
このような要領で延べ4週(8コマ)ほど繰り返し行った。新聞を通して様々な記事を満遍なく見ることにより世界や日本で今何が起きているのか、何が問題となっているか、今できることは何か、また未来に向けて必要なことは何かなど、その姿が見えてくることを提示できた。そして注目の記事を発見しコンピュータを使って書き留めることによって自分自身の問題意識を高めることと情報機器の操作、情報の整理へとつながった。更に新聞とTV、インターネット、携帯電話などの情報収集手段(メディア)の特徴と差異、著作権やプライバシーの扱い方の違いなども学習できた。今回初めてNIEの実践校になり、うまく授業に取り入れていくことが出来るのか非常に不安ではあったが、何とか従来の時間数と授業内容を逸脱することなく終えることが出来た。当初から生徒にあまり多くのことを望まず、単純に「新聞を読もう」に照準を合わせ、自然に無理なく興味を持ってもらうことをモットーに普段でもいろいろな所からいろんなことを情報としてキャッチし、確かな情報を基にそれを活用し試行錯誤しながら問題を解決し生きていくことが大切だということを伝えられたような気がするが?「新聞」を教材にすることにより今まで一度も新聞を開いて見たことのない生徒も真剣に読むようになったり、クラスの中で新聞に載っていた1つのことが話題となって意見が出たり、こちらが指示するまでもなく自然に行われるようになった事が私にはうれしいことである。そうした多くのメディアを通して広く社会に目を向け、意見の交換、議論を行うことこそが彼らにとって生きる力となるであろう。あわよくばこれが持続してくれたらと思う欲深な私である。最後に今回新聞活用にご協力、ご援助頂きました関係新聞各社、並びにNIE事務局の皆様に感謝申し上げると共に、授業でご講義頂きました北海道新聞室蘭支社、、室蘭民報社の記者の方に厚くお礼申し上げます。