2009年度NIE実践報告書
高等学校 教科「情報」での「NIE」(V)
登別大谷高等学校 星 秀一
(1)普通教科「情報」と新聞
平成21年3月告示の高等学校学習指導要領第10節「情報」では、その目標を「情報および情報技術を活用するための知識と技術を習得させ、情報に関する科学的な見方や考え方を養うとともに、社会の中で情報および情報技術が果たしている役割や影響を理解させ、社会の情報化の進展に主体的に対応できる能力と態度を育てる。」としている。これを言い換えれば「情報活用の実践力」をつけ、「情報の科学的な理解」をさせ、「情報社会に参画する態度」を養うこととなっている。とりわけ、これから社会に出て行く生徒にとっては情報と個人や社会生活とのかかわりを知り、情報や情報技術の特性や仕組みを理解した上で、それらを活用し自ら課題を発見しそれを解決していく能力を身につけ、更に自分の考え・意見などを上手に相手に伝えるコミュニケーション能力を高めることが大切なことである。
このような観点から我々にとって身近な存在であり、情報の宝庫でもある情報盛りだくさんの「新聞」を通して、生徒は身の回りにある具体的な問題を発見し、思考・推理・考察の後、解決する方法を見つけ出す。そしてそれを発表し評価し合うことで問題解決能力とコミュニケーション能力など社会生活に必要な力を身につけることが出来るものと考えた。又、新聞にはIT社会における利便性を高める技術革新の情報や反対にネットワークを利用した様々な犯罪、プライバシーや著作権に関する問題の記事などが数多く取り上げられている。このような実社会に起きている問題を知り、これとどのように関わっていくかを教科「情報」で学習するとき「新聞」はとても有効で最適なものだと判断し、3年前より「新聞を活用しての取り組み」を始めた。
(2)3年間の取り組み
まず初年度は1年生を対象に情報を活用する際の実践的な活動を通して、情報と個人や社会生活とのかかわりを関連付けて指導し、情報や情報技術の特性や仕組みを理解した上で、それらを活用し自ら課題を見つけてそれを解決していける能力を育成することであった。「問題の発見」、「問題意識」、「問題の整理」「問題解決手段」という手順をふみ問題解決に結びつける過程を新聞というメディアを利用して実践することであった。そこで様々な記事を満遍なく見させ、世界や日本で今何が起きているのか、何が問題となっているかを知り、今できることは何かを、また未来に向けて必要なことは何かなど考えさせそれらをコンピュータを使って整理させた。
2年目も対象は新1年生であるためまずは今社会で起こっていること、話題になっていることを知らせる目的で週1回2コマ続きの授業のはじめに一人1部ずつ新聞を渡し、30〜40分かけて新聞を読むことに集中させた。その後各分野(政治、経済、国際、社会、生活、地域など)で目を引いた記事、興味のある記事1つを抽出しコンピュータにてその主見出し、袖見出し、リードなどを入力・整理させた。その後アナログとディジタル・数値と文字の表現についての学習とディジタル化の効果的利用を関連づけて学習させる目的で、特に注目の記事についてその部分を切り取り、情報機器(スキャナ)でPCに取り込み保存することにした。
3年目は上記1・2年の取り組みに加えて「情報の上手な伝達の工夫」すなわち「コミュニケーション能力」、「プレゼンテーション能力」を高めることに重きを置いてみた。最初は新聞全体を見渡しその主見出し、副見出し、リードを読む。次にその中で興味関心のある部分の記事をじっくりと読む。記事の中に書いてあることで疑問のある部分を更にインターネットを使い調べ整理する。記事に関する自分の意見、考えをPCで書きとどめる。そして新聞のその記事の部分を切り抜きコンピュータに取り込む。こうして保存したものをプレゼンテーションソフトでまとめる。できあがったスライドを使いながら、自分の注目した記事の説明と自分の意見などをクラス内で発表する。それに対する質問を聞き応答する。うまく記事の内容が皆に伝わったか検証する。このようなことが出来るように計画をした。
(3)実習・実践 (記事の整理と意見など)
2009年 9月17日(木) 毎日新聞 @総合 予算編成 連携カギ 重要閣僚どう動く 主導権争いの芽も A政治 岡田外相 基本は「アジア重視」 問われる対米チャンス B国際 新型インフル流行防げ!! ネットゲーム人気 1週間で20万人利用 C経済 ユニクロ今度はシューズ 男女各4種類発売 D生活 「ありがとう」を励みに 主婦、退職者…訓練受け活動 Eスポーツ 地元ファン祝福 松坂復活2勝目 次戦が正念場「まだ余力ある」 F地方 北照、コールド発進 駒苫、鵡川は3回戦へ G社会 「しんちゃん」作者不明 家族捜索願「群馬の山に行く」 H特に注目の記事 高相被告を保釈 「私の責任」謝罪 (1)内容: 女優の酒井法子(本名・高相法子)被告(38)=覚せい剤取締法違反(所持・使用)で起訴=の夫で、同法違反(所持・使用)で起訴された自称プロサーファー、高相祐一被告(41)は16日、拘置先の警視庁渋谷署から保釈された。東京地裁が15日に保釈を認める決定を出し、高相被告は16日に保釈保証金500万円を納付した。高相被告は16日午後5時12分ごろ、同署正面玄関から黒のジャケット姿で現れた。黒の帽子を脱ぎ、報道陣に深々と頭を下げ「今回の件はすべて私の責任。ご迷惑をかけ、不愉快な思いをさせ、すみませんでした」と謝罪。迎えの車に乗り込んで立ち去った。40代男性が車に靴を投げつけるハプニングもあった。 (2)記事に関して考えること:こうして最近芸能人が次々と捕まっていってる中で私は、ほかの芸能人たちはどうなのだろうと思う。今までに捕まってしまった人はただタイミングが悪かっただけで、芸能人だから、捕まらないだろと思ってやっている人がまだいるのではないだろうかと思ったりもする。最近薬害の勉強をして改めて思ったが、いくら夫婦でも自分で断る勇気が必要だと思うし、夫婦の仲はそういうことをしあうような仲ではないと思う。 |
![]() |
![]() |
||
(5)成果と課題
今年度は重点課題である「コミュニケーション能力」、「プレゼンテーション能力」の向上を目指したが、結果としてそれはさほどかなわなかった。生徒自身が公の場で話すことに慣れていないこと、高校生になると照れくささが出ることなど原因はあれこれあるが、プレゼンの基本であるスピーチ能力不足があげられる。ソフトでまとめ上げることは出来るが、発表の場になると下を向き原稿を読む生徒がほとんどであった。また、教室内が暗いこともあって聞き手の表情も読み取れないという環境も今後改善されるべき点である。これから社会に参画する生徒にとって自分の意見や考えを上手に相手に伝えることは極めて重要である。今後はこれをきっかけに少しずつ何度もこういった経験を積み重ねながらこれらの能力を高めて行って欲しい。
(6)おわりに
NIEの実践校になり3年間、教科「情報」との関わりを追求し生徒とともに「新聞」を活用した情報の授業を展開してきました。私自身改めて新聞を隅々まで見る機会を得たことと、生徒が新聞を通して様々な情報を得て彼らなりにいろいろな考えをめぐらし、意見を持つことが出来たことなど「NIE」から得たものは数多くあったと思います。生徒には種々のメディアの中でその特徴を把握し、情報の信憑性を検証しつつ、これらを有効に活用し問題を解決して行くと共に、他の人の考えや意見など知り自分の意見を発信しコミュニケーションを十分にとる事があらゆる問題解決にはとても重要であることを認識して社会に参画して欲しいものです。
最後に3年間本校の新聞活用授業にご協力、ご援助頂きました関係新聞各社、各新聞販売店の方々、ご講演頂きました諸氏、並びにNIE事務局の皆様に感謝申し上げます。有難うございました。